フラワーエッセンスの植物研究ノート

自然や植物とのつながり、フラワーエッセンスのことなど

枇杷のプロフィール・その1

少しずつアップ予定ですが、去年観察した枇杷の植物研究を紹介していきます。

 

 

 

はじめに

 

枇杷というと、実はみなさんよく知っているけれど、

花は・・・・?という方も多いかもしれまません。

枇杷の花は冬に咲く上にあまり目立たないので、気づいていない場合が

多いと思います。

 

下が枇杷の花の写真です。

 

 

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あまり目立たない冬の花なため、一応俳句では

枇杷の花は冬の季語になっていますが、 

陰気なものが多いようです。

 

枇杷の花を季語にした俳句

 

枇杷の花鳥もすさめず日くれたり 与謝蕪村

職業の分からぬ家や枇杷の花 正岡子規

人住んで売屋敷なり枇杷の花 高浜虚子

蜂のみの知る香放てり枇杷の花

枇杷の花今年も喪服よく着たり

住み古りて枇杷の花咲くとも知らず

病む妻に嘘いくつ言ふ枇杷の花

枇杷の花咲くともなしに盛りすぎ 大戸一枝

ま盛りといふ寂しさの枇杷の花 藤井紅於

枇杷の花問はれてまどふ母の齢 大立しづ

足早に去るものばかり枇杷の花 坂梨映江

縁遠き娘二人よ枇杷の花 斉藤千恵

 

しかし、夏の季語となっている枇杷の実のほうは明るいものが

多いようです。

 

枇杷の花に関しては

 

・ 暗い、陰気、地味

・ 寂しい

・ かなりめだたない

 

という印象が強いようですね。

枇杷の木はすぐ大きくなって常緑樹なので家が一年中日蔭になってしまうため、

陰気なイメージや家に病人が出てしまうなどの迷信がついたようです。

それは日本人の住居は庭木で家の中の住環境を調えるような傾向が他の国と比べて

強いところも要因しているのではないかと思います。

 

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1.植物学的分類

•学名   Eriobotrya japonica

(erionギリシャ語で軟毛、botrysはブドウの房、総状からなる)

ばら科びわ属 

 

•原産地 中国(南部・特に揚子江の南部沿岸に多い) 日本(関東以南)

•常緑樹 樹高6~10m

•:現在の主な栽培地 九州、四国、広島、兵庫、千葉

•開花期 11月~2月

 

枇杷の木はばら科でもめずらしく常緑樹で、冬でも青々とした葉がついてます。

樹齢はだいたい90~100年前後ということです。

枇杷の名前は中国からの読み方のヒワからきている説と葉や実が楽器の琵琶の形に似ているからという説とがあります。

 

 

2.びわ属の種類

20種類ほどあるが種名が明らかなのは11種類

(枇杷・麻栗披枇杷・礫葉枇杷・騰越枇杷・怒江枇杷・南亜枇杷・香花枇杷・大花枇杷・台湾枇杷・狭葉枇杷・小葉枇杷)果実として利用されているのは枇杷だけ。

 

ほとんどが中国原産のものになり、ミャンマーあたりから中国南部の長江沿岸、ベトナム、マレーシアなどのアジア一帯に原生種があり、ヨーロッパや他の大陸には原生分布の報告はないそうです。

 

このアジア一帯は気候的に温暖で湿度が高い地域で、照葉樹林帯におおわれています。日本もその昔、照葉樹林に覆われていて、今では神社の森などしか残っていませんが、一年中常緑の木々で覆われた森だったため、とても暗く、うっそうとしていたようです。

そこから焼き畑がおこなわれ、いろいろな作物を栽培していく文化が生まれ、

照葉樹林文化ができあがってきたようです。

 

アニメ監督の宮崎駿さんの「もののけ姫」という映画はそんな照葉樹林

覆われていた昔の日本を舞台にしたものですが、彼が照葉樹林文化論に強く共鳴

していたためのようです。

 

ですから、日本はもともと照葉樹林帯であったと考えるならば、同じ照葉樹林である枇杷の木は古くから自生していたという説が有力に思われます。

現在、栽培されている枇杷の木は田中と茂木という外来の栽培種ですが、

野生種は日本の各地(福井県山口県など)で発見されているので

あったようです。

 

果実としての利用は正倉院文書の記録などに残っているので食べられていたようですが、枇杷は唐読みの名前なのでそれは中国からのものかもしれません。

日本の野生種は実がとても小さく食べられる箇所がほとんどないようなので。

 

中国ではかなり早くから栽培が発達していて、果実の大きなものもあり、

ポピュラーだったようです。

 

 

3.形態とジェスチャー

 

•花の形態  

三角状の円錐花序を出し、100~200個の小花がつきます。

5枚の花弁にそれぞれ内側に黄色い毛がついています。

つまむと容易に取り除くことができるが風などで取れることはありません。

 

下向きに展開して花が咲くことで葉の陰となり、幼果を寒さから守り、

細かい毛で保護されている様子から繊細さと守られているような感じを受けます。

 

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葉の形態

葉は互生し、厚くて硬い。長さ15~20cm。長楕円形あるいは倒披針状長楕円形、

縁には浅い波状の鋸歯がある。表面はでこぼこが多少ある濃い緑で多少テカっています。

葉の裏はビロード状の褐毛におおわれています。

 

新葉は全体に表面が白っぽい毛で覆われていて、指ですぐにのぞくことが出来ます。

水分の蒸発を防ぐためではないかと思われます。

 

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実の状態

丸あるいは楕円形の橙黄色で初夏、5,6月頃に熟します。

1.5cm×2cmくらいの大きさの茶色い種子が5,6個ほど入っています。

 

収穫前に雨が少ないと糖度は高いが果肉が硬い。

収穫前に雨が多いと糖度は低いが果肉はやわらかで肉質がよい。

実がなるのに9年くらいかかります。

 

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・受粉 

冬に花が咲くけれどミツバチなどの昆虫の媒介と目白などの鳥によって結実します。

鳥媒花は日本では数少なく、ブラジルではハチドリがこのビワの花蜜を好んで吸うので、受粉がよく行われ、結実が良好らしいです。

ちなみにつばき、さざんか、桜も鳥媒花です。

 

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〈つづく〉