漫画が好きな人ならけっこう誰でも読んでると思ったりしてたけど、かなり古い作品なので、読んでない人も多いようである。
どうしても共時性的に紹介したい作品がある。
山岸涼子の「天人唐草」である。
このタイトルで自選集の文庫本も出ている。
いつぐらいかな70年代か80年代くらいの作品だと思う。
はじめて読んだときはかなり衝撃的だった。
それから何年もたってフラワーエッセンスの勉強をするようになり、ベイビーブルーアイズは父親のアーキタイプと関係があるなどと知り、日本の花のエッセンスにオオイヌノフグリが作られ、まったく異なる植物でありながら、ベイビーブルーアイズとの類似性をもっていることを知る。
そんなことはもちろん山岸さんは知るはずもない。
このお話はある女性がどんなふうに父親と関わってきたか、権威としての父親を通してどんなふうに成長してきたかについて描かれてある。
主人公が接する父親像はこういうもの、父親から受け継いだ理想の女性像はこういうものと理解して、育つ。
話の中にイヌノフグリの花が象徴としてあらわれる。
その花の名前を主人公が口にすると、父親からしかられ、母親から天人唐草と呼びなさいと訂正される。
これは彼女がありのままでいることを許されず育ったことの象徴でもある。
本来は無邪気で陽気だった性格がどんどん型に押し込まれ、過剰防衛の強い女性となっていく。
そして理想とはかけはなれた男性の同僚から「みえっぱり」と言われ、激怒する。
ありのままでいることが許されない(と思っている)彼女はそのことがわからない。
日本人であればかなり共感できるところもあると思う。
自分が人にどうみられているのか気になるとか、りっぱにみられたいという自意識過剰な部分。
それが見事にある女性の成長の過程を通してたくみに表現されている。
どんなに親との関わり方が関係しているのか。
はじめて読んだ頃はかなり若かったので、目からうろこみたいな感じだったかも。今はそれはある程度みながわかってはいることだけど、この漫画にオオイヌノフグリを登場させた山岸先生はどのような意図だったのだろう。
フラワーエッセンスのことは知らないだろうが、日本人に非常になじみのあるこの花がアーキタイプとしてなにか子供の頃の思い出と結びついたところがあるのでは・・というのはなんとなく想像ができる。
オオイヌノフグリの「神聖」という花言葉やベロニカという学名がイエスの汗をぬぐった聖女の名前からきていることもあり、神聖なもの、神、精神的なものとのつながりがみえてくる。
クリエイターというのはときにはチャネリング的な才能をもっていることがあるのだが、なにげにこの作品にイヌノフグリをもってきたのはすごいと思う。