以前からウバユリには興味を持っていて、じっくり観察したいものだと思っていた。
初めてお目にかかり、とても興味深い植物だと思った。
今後も観察は折々に続けてみたい。
ウバユリ
学名 Cardiocrinum cordatum
科属 ユリ科ウバユリ属
分布 関東地方以西、四国・九州地方
観察日と場所 2010/8/5 六甲高山植物園
★植物の様子
花だけ見ると一見、ユリ属の仲間のようにみえる。
以前はユリ属に入っていたそうだが、葉はあまりに違う。
牧野富太郎の本にも「ユリ属から独立させて、別属のものとしている」と書かれてある。
その葉はこのような感じ。
単子葉植物にはめずらしく、網状脈を持っている。
葉は全体に下部に集まり、ハートの形をしていて、とても大きい。
この葉は新芽のときは緑色のつやつやした葉っぱらしいが、花が咲くにつれ、だんだんと枯れたように(というより、虫に食われたかか病気になったような枯れ方)なってくる。
ほかの葉っぱがかぶさって見にくいけど、枯れたような葉が花が咲き始めているウバユリの葉。なぜか真ん中に穴が開いたり、食われたような感じになったりしている。
花が咲く頃には葉がないので歯なしのおばあさんのようであるとして、「姥百合」と名がついたとか。また、葉によって花を育てているので、「乳母百合」という説もある。
この植物は全体は1mから1m50cmくらいで、花は長さ20cmくらい。
半日陰に生育するので、大きく目立つ。
花は7月~8月に開花で、花の時期は短く、見頃は1週間もないくらいだそう。
茎があまりにしっかりとしてまっすぐなので、木陰にあるとつる植物がたいてい巻きつかれていることが多い。
つぼみの状態。
このように下部に大きな葉があるが、下草より光を受け取れるよう葉はしたから20cmくらいのところから伸びている。茎はまっすぐ伸び、それに沿って葉が小さくなったようなものがどんどん先について、それに覆われた蕾が上に向かってついている。
そこから花が伸びて横になり、開くようになっている。
花は緑がかった白で、4枚の花弁の上に2枚かぶさっているかのような形をとっている。ラッパ状に開き、先のほうしか反り返ることはない。
花の奥は濃い赤黒い斑点があった。
横からみると緑色が残り、葉から花に変身したかのよう。
香りは書いてあるのには異臭を放っているなどとかかれてあったが、薄いジャスミンのような甘い香りがした。
葉は少し茶色くなったりしていても虫は一切ついていない。
★ユリ科ユリ属との比較
ユリはイメージとしてはしなやかな茎を持ち、日当たりのよいところにあるユリは山の斜面などに生え、茎を曲げて花がぶら下がるように咲いていることも多い。
花の重みで茎が曲がるというより、他のユリ科の花では花がひとつしかついていなくてもかなり曲がっているものもあり、決して重くないのに曲がっているところから、球根植物としては茎が太くしっかりしているが、栄養をとられると茎の支える力自体が弱くなってくるのではないかと思う。
そのように考えると根を深く張ることが出来ない球根植物なのに、ウバユリは太くしっかりとした茎でまっすぐに保つというのはかなりエネルギーを使っていることになる。
花というよりももしかしたら葉はこの茎を保つために養分を使っているのではないだろうか。
立ち姿はまったくヤマユリと対照的でおもしろい。
一方は日当たりのよい場所でめいいっぱい開いて私が主役!とばかりに花の形も香りも主張し、もう一方は日陰で他の緑と混ざるかのような色あいで目立たないはずなのに、直立不動でたたずんでいる。
ヤマユリは日本特有の花でありながら、日本人っぽくないような感じがしたりもするけれど、ウバユリのほうは日本の昔の女性っぽいイメージがする。
フラワーエッセンスがあるとおもしろいだろうと思う。
少なくともウバユリは茎のまっすぐさと人間の背骨との関係はあるのではないかとは思う。
心臓形と言われる葉の形や緑という色からハートに関係しそうな予感があったり、葉が成長を支えるところや、表舞台に立っていないところから、なにか「支える」という要素も感じられる。
そしてユリ科の特徴である水の要素といい、エッセンスがほしい!と思わせてくれる。
今後も毎年観察していきたい。
なお、ウバユリ属は他には北海道や東北のオオウバユリとヒマラヤのヒマラヤウバユリしかない。