金子みすずの花のうた
童謡作家としておなじみの金子みすず、けっこう好きなんですが、
彼女が残した花を題材にした詩が素敵なので紹介します。
まだまだたっくさーんあるので紹介しきれませんが、
すごく胸に響きます。
「花のたましい」
散ったお花のたましいは
み仏さまの花ぞのに、
ひとつ残らずうまれるの。
だって、お花はやさしくて、
おてんとさまが呼ぶときに、
ぱっとひらいて、ほほえんで、
蝶々にあまい蜜をやり、
人にゃ匂いみなくれて、
風がおいでとよぶときに、
やはりすなおについてゆき、
なきがらさえも、ままごとの
御飯になってくれるから。
「蓮と鶏」
泥のなかから
蓮が咲く。
それをするのは
蓮じゃない。
卵のなかから
鶏がでる。
それをするのは
鶏じゃない。
それに私は
気がついた。
それも私の
せいじゃない。
「曼珠沙華」
村のまつりは 夏のころ
ひるまも花火を たきました。
秋のまつりは となり村、
日傘のつづく 裏みちに
地面(じべた)のしたに棲むひとが
線香花火をたきました。
あかい あかい
曼珠沙華。
「薔薇の町」
みどりの小徑、露のみち、
小みちの果は、薔薇の家。
風吹きやゆれる薔薇の家、
ゆれてはかをる薔薇の家。
薔薇の小人はお窓から、
ちひさな、金の羽みせて、
おとなりさんと話してた。
とんとと扉をたたいたら、
窓も小人もみな消えて、
風にゆれてる花ばかり。
薔薇いろのあけがたに、
たずねていった薔薇の町。
その日
わたしは蟻でした。
「夕顔」
せみもなかない
くれがたに、
ひとつ、ひとつ、
ただひとつ、
キリリ、キリリとねじをとく、
みどりのつぼみただひとつ。
おお、神さまはいま
このなかに。